日本写真協会・新人賞を受賞いたしました。

今年1月に発表した写真集「弁造 Benzo」が、日本写真協会賞の新人賞を受賞させていただくことになりました。

私家版の写真集を作ろうと暗室に入り、ひたすらプリントを始めたときはもちろんのこと、写真集が実際に刷り上がって届いた段階になっても、正直、この写真集がどのように受け入れられるのか不安でした。中身については、現段階で僕ができること、良くも悪くもそれを精一杯詰め込んだつもりでしたが、そういう達成感と不安は別ものもので、300部限定出版というそんな気持ち現れでした。

この写真集出版に合わせて銀座・大阪ニコンサロンで開催した「庭とエスキース」についても同様で、弁造さんの不在というテーマを顕在化させるために、ポートレートを入れないというセレクトには、最後の最後まで不安がありました。

でも、本当に幸いなことにすべてが杞憂となりました。

写真展は予想を大きく超えて、多くの方々の胸に抱えられていきました。展示でも足を止め、視線を止め、何回も何回も会場を巡りながら、本当に多くの方々が真剣に見つめてくれるという光景を途切れることなく見させていただきました。

それは、1人の「生きること」を、それがたとえ会ったこともなく、すでに存在もしていないという遠い他者の人生であったとしても、写真が持つ不思議な力で共有することができるという不思議で素敵な出来事だったと、今の僕は感じています。

写真はやっぱり信じることができる、もちろん生きることも。

「年をとって、身体も動かん。好きな絵も描けん。それでも簡単に死ぬわけにはいかんじゃろう」と僕を見つめた弁造さんの言葉を思い出して、そう思います。

写真集をご購入いただいた方々、展示をご覧いただいた方々、写真展を開催させていただいたニコンサロンのギャラリー企画課の方々、そして、賞をくださった日本写真協会の方々、「弁造」に関わってくれたすべての方々に深く感謝しております。本当にありがとうございます。

そして、弁造さん、本当にありがとうございます。

6月1日から、東京ミッドタウン内の富士フィルムスクエアにて、受賞展も予定されています。お近くにいらっしゃった際にはぜひお立ち寄りいただけますと幸いです。

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