テスト印刷の結果#写真集制作

先日、サンエムカラーさんからテスト印刷の結果が届いた。今回、テスト課題となったのは、印刷のスクリーンの決定だ。

従来の網点によるAMスクリーンの高精細240線か、ランダムに配置された極小のドットで表現するFMスクリーンか、僕のプリントにはどちらが適しているかと実際にテストで刷っていただくことになった。

担当いただいているサンエムカラーの吉川和匡さんによると、AMスクリーンは、黒が締まった印象でダイナミックな仕上がりが期待できるとのこと、一方のFMスクリーンは、極小のドットで再現するため、非常に緻密で階調が豊かでシャドウ部の再現にすぐれているため、精細感が期待できるとのことだった。

銀塩プリントでも同じことだが、コントラストを強くするとダイナミックとなり、階調を優先すると滑らかな印象となる。どちらが良い悪いではなく目指すべき表現の違いだ。

僕のプリントの場合、ある意味、しっかりと濃度を乗せる傾向にあるので、コントラストがある。シャドウ部が豊かで滑らかな黒に彩られている感じも重要。そうなると、テスト印刷前の段階では、どちらかというAMスクリーンかなという予想をしていた。

そして、届けられたテストプリントを見てみると、やはりAMスクリーンの方がイメージに合うような印象だった。FMスクリーンはどうもシャドウ部の中に多くのものが写り込んでいるような印象。この感想を吉川さんに伝えると、印刷サイドからするとFMスクリーンの方が僕のプリントをより良く再現できるという意外な判断だった。

話を詳しく聞いてみると、確かにAMスクリーンの方がシャドウの黒が締まり、プリントに近いように思える。しかし、シャドウ部の中の像をうっらすらと再現しているFMスクリーンがプリントにないものを作り出しているかというとそうではないないという答え。

「どんなに高精細であろうと、オリジナル原稿にないものは印刷では再現できません。FMスクリーンでのテスト印刷に見えるシャドウ部は印画紙の中にあるから再現できているんです。一見、シャドウが潰れているように見えて、でも実はそこに何かがある。奥山さんの写真のそういう部分を大切に考えると、我々からするとFMスクリーンという判断です」と電話の向こうで吉川さんが話してくれた。

僕の中ではこの言葉が決め手となり、FMスクリーンでの印刷をお願いすることになった。

弁造さんの世界は、光と影で彩られている。陽光が作り出す明るさと木々が落とす黒い影。真っ白な雪も夜となれば漆黒の存在だ。

ユーモアを信条としてた弁造さんの人生もまた「老い」という深い陰影を帯びたものだった。

FMスクリーンがどのように弁造さんの人生を再現してくれるのか、とても楽しみだ。

 

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