束見本#写真集制作

今回、印刷をお願いすることになったサンエムカラーさんから束見本を届けていただいた。

用紙の選定については、かなりの時間を費やした。手持ちの写真集であたりをつけたほか、上京してサンエムカラーさんで打ち合わせをする際には、写真集を手に取れる書店やカフェ、紙メーカーの竹尾のギャラリーなどを巡って、「弁造」に適した用紙を考えていった。

考えてみると20年にわたって商業印刷に関わりながら写真を撮ってきたが、これほど用紙のこと、製本のことを真剣に考えたことはなかった。もちろん、長い間、商業印刷に関わってきた経験が生きた部分も多かったが無知を思い知らされもした。

それでも、サンエムカラーの吉川さんからいくつもの助言をいただきながら、ひとつづつ紙を選んでいって最終的にこれでいこうと決めた仕様で束見本を制作していただいた。

カバーには、柔らかでありながらもざらざらとしたテクスチャーを持つ「わたがみ」を。表紙には、弁造さんのエスキースを銀のインクで描くと映えそうなチャコール色のしっかりとした厚い紙である「GAファイル」を。見返しには、表紙から続くグラデーションを意識して、少し淡いブラウン系でエンボスがナチュラルな「NTラシャ」を。本文用紙には、白色度、不透明度、めくりやすさ、紙厚を保ちながらも軽い「b7トラネクスト」を選んだ。ここに、ダンボール系の紙でスリーブ状の箱も加えた。

こうして用紙を決める際、実際の紙を目と手で確認しながら選ぶとしても、最終的な仕上がりについてはやはりイメージの世界。実際の束見本を手にするまでは、いくつかの不安もあった。でも、実際の束見本を手にするとすべて杞憂に終わった。

手触り、質感、カバーから表紙、見返し、本文へと続く連続性。すべてにおいて想像以上のものだった。

そして感じたのはやっぱり本はいいなということ。この揺るぎない物質感に、そもそも本が好きでこの世界に入った遠い過去のことなどを思い出したりした。

後日、またノギスを使って、1mm、もう1mmと写真を配していった。いよいよ「弁造 Benzo」が具体性を帯びてきた。

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