352ページ#写真集制作

暗室で膨大なネガからセレクトを進めつつ約800枚のプリントを制作した後、構成の繰り返しを経て、352ページの写真集を作ることになった。

たった一人の人物にフォーカスを当てた作品に352ページも必要なのかどうか、幾度となく逡巡したが、弁造さんの人生を通じて、「生きること」を表現するにあたり、どうしてもこのページ数が必要だと感じた。

物語でいうところの起承転結。僕にとって生きることとは、ここから外れた部分だ。

さまざまなドラマがあるのが人生だが、実は退屈で何も起こらず、淡々としていてアンチクライマックス。そんな時間が人生には多くある。でも、そこにこそ、人生の本質と普遍が見え隠れするような気がしている。

ある日の午後、買い物から帰ってきた弁造さんは、ソーセージをや小麦粉を抱えながら丸太小屋に入ってきた。本当に何でもない時間。でも、こうした、あわいのような時間の積み重ねが人生をかたちづくっている。

弁造さんと出会い、見つめたことで知り得たことのひとつだ。

こうした時間が積み重なり、強い背骨となって352ページを貫いていく。

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