冬、雪の中で過ごす弁造さんを訪れると、決まって長い時間を弁造さんの丸太小屋の中で過ごした。
やるべきことは雪かきぐらいでそれが終わってしまうと、弁造さんとただただ話をしていた。
いろんな話を聞かせてもらったけれど、たいていが思い出話で歳を経るごとに繰り返しの話が多くなった。
そして、晩年は、そんな話をしながら弁造さんは腰掛けていたベッドに横になって眠ってしまうこともよくあった。そうなると僕は決まってこっそりと弁造さんの寝顔を撮った。
窓からの雪の反射で部屋がいつもより明るく暖かになる午後、眠っている弁造さんにシャッターを押すと、ローライフレックスの小さなカシャッというシャッター音が鳴る。そのときの僕の心理には、よく寝ているなあという感想以外のことはなかったと思うけれど、なぜかよく思い出す瞬間でもある。