「庭とエスキース」展開催に向けて

新年1月24日から30日まで銀座ニコンサロンで開催する「庭とエスキース」の準備を進めている。(※大阪ニコンサロンでの展示は2月22日〜28日)

ニコンサロンに制作していただいたカードや毎回個展の際に作っている展示内容を伝えるカードなども出来上がった。あとは、展示作品を暗室で仕上げるだけになってきた。

また、銀座展では、今年1年かけて制作してきた写真集「弁造 Benzo」の販売も始まる。さらに1月26日には、写真展会場で敬愛する写真家の山下恒夫さんとのスライド&トークショーも予定している。

展示に来ていただいた方、写真集を手にとっていただいた方、トークに耳を傾けていただいた方、それぞれの方々がどのように弁造さんの人生に触れ、何を思ってくれるのだろうか。

弁造さんをテーマにした展示は2008年と2010年に行なっている。この二回の展示で興味深く思ったのは、写真の中の「弁造さん」がみんなの弁造さんになっていくことだった。

会ったこともない声を聞いたこともない「弁造さん」という人物に対して、見に来てくれた方々は、懐かしい家族や友人とでも再会したかのように親しみを込めて「弁造さん」「弁造さん」とその名を呼び、生き方について、美しい庭について、絵について語ってくれた。

その様子を眺めていた僕は、こうして写真に撮られ、写真になることで「弁造さん」はみんなの「弁造さん」として共有されていくんだなと感慨深い思いに浸った。それは僕にとっての写真の力そのものに思えたからだった。

おそらく弁造さんの写真集を作ろうと思ったのはそのときかもしれない。まだまだ撮影の途中でいつ写真集を作るタイミングが訪れるのか検討がつかない時期だったけれど、こうして「弁造さん」と親しみを込めて呼んでくれる人、弁造さんの「生きること」を必要としてくれる人たちに手渡しのようなかたちで届けることができればどんなに素晴らしいことだろうとぼんやりと考えたりした。

そう考えてから7年もの長い時間がたってしまったのは反省すべきことなのだが、こうして何とか弁造さんの写真集を作ることができたのは本当に大きな喜びだ。弁造さんはもういないけれど、写真集の中に弁造さんが生きた時間は濃密に詰まっている。「あんた、わしが死ぬまで撮るっちゅうんなら骨になるまで撮れよ」と言ってくれた弁造さんも照れながらも写真集を手に取ってくれるだろう。

 

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