森のこと#写真集制作

弁造さんの庭には森がある。弁造さんが家の材料にと育ててきた森だ。この森は30年ほど前に、妹さん家族が暮らす2階建の大きな丸太小屋を弁造さんが手作りする際に半分ほど間伐されたという。生えている木は家の材料にしやすいカラマツ。寒さの厳しい北海道ではスギは育ちにくいため、カラマツを植えるのが一般的だ。

それ以外にも弁造さんが大切にしているのが、オンコの木だ。正式にはイチイという名で、成長がとても遅い針葉樹だ。この木は床柱などの造作部分に使うととてもいい表情が出るというので弁造さんは大切に育てていた。

ただ、問題は、カラマツとは比べものにならないほど成長が遅いため、用材として利用できるようになるまで長い年月が必要なことだ。

庭にはオンコが幾本も植えられている一角があって、僕が訪ね始めた頃はまだ2mほどまで育っていなかった。弁造さんは、これらの木が役に立つ頃には自分が存在していないことを当然理解していたのだろう。

よく笑いながら「オンコは部屋の中で一番の良い木だから”1位”っていう名がついたんじゃ。この庭のオンコを誰がどういう風に使ってくれるのかなあ」と眺めていた。

弁造さんが逝って5年。オンコが役に立つにはまだまだ長い時間が必要だ。

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